第57章 会話―――辻新之助
『終わったー!ありがとう辻くん』
「いや、終わってよかったよ」
『よし、と。じゃあ、私資料を先生に渡しに行くから』
「手伝うよ」
『大丈夫。慣れてるから』
と言って歩き出そうとしたとき私は躓いて資料を落としそうになった
「ほら、だから手伝うって言っただろ」
『ごめん……』
支えてくれた辻くんは何も言わずに資料を半分以上取っていく
「行くよ、朝霧さん」
『うん!』
職員室にいた先生に渡し、靴を履き替える
「朝霧さん、送っていくよ」
『え!悪いよ!家近いし』
「いいから、おれが心配なんだ」
『じゃあ、お言葉に甘えて』
「一人で何でもしようとするな」
『え?』
「朝霧さんはたまに無理しすぎるときがある。そういうときは俺を頼れ」
『でも、辻くんはボーダーだから申し訳ないよ』
「そんなことない。ボーダーだってそこまで忙しくないし、好きな人に頼られるのは嬉しいことだから」
『え?好きって!?』
「今年の四月、初めて朝霧さんが俺に話しかけてくれたとき、俺は女子が苦手だったからちゃんと話せなかったんだ。でも、朝霧さんはゆっくりでいいって言ってくれた。
変かもしれないけど、俺はその時から朝霧さんが好きだよ。
こんな俺だけど、付き合ってくれる?」
『え、えと………私…』
恥ずかしくなって俯くと辻くんが笑って続けた
「返事は今日じゃなくていい。俺もゆっくり待つから」
『………!』
辻くんの顔を見つめると辻くんは私の目を覆った
「そんなに見ないで……」
『ふふっ』
私の目を覆っている手を握った
『私も少し辻くんのことが気になってた……。私でよければこちらこそお願いします……!』
「……ありがとう」
辻くんはふわりときれいに笑った
その笑顔に倒れそうになったことは私だけの秘密にしておこう