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ワールドトリガー【中・短編集】

第56章 駄犬――犬飼澄晴


それから少し経ったある日

私はまた犬飼に絡まれていた
皆が言うには仲良くなってるように見えるらしいが、私からしたらずっと付きまとわれていて迷惑だ


実は今日、B級ランク戦があり中位の荒船隊、諏訪隊、那須隊の戦いだった
その解説をしていたのが東さんで私はランク戦が終わったあとすぐに東さんのところにいった

『東さん!』

「あっ、夏海!」

犬飼の焦っている声が聞こえたが、私は真っ直ぐ解説席に向かった

「おー、夏海。久し振りだな」

『はい!解説すごく分かりやすかったです!』

「ありがとな。そう言えば聞いたぞ。この前村上に勝ち越したんだってな」

すごいじゃないか、と頭を撫でられる
嬉しいが、あれは偶然だと思っている私は東さんを見た

『あれは、鋼に休憩を与えなかったからです。休憩を挟んでいたら多分また負けてました』

「それでも普通ならなかなか勝てない。俺も師匠として鼻が高いよ」

その言葉を聞いて私はやっと笑う


私はアタッカーだがスナイパーの東さんが師匠だ

皆に不思議がられるが、同じポジションじゃなくても東さんの指導してくださる戦術はアタッカーでも通用する

それに、ボーダー最初のスナイパーでもある東さんを私は入隊時から尊敬していた

『いえ、東さんの指導のお陰です』

「そう言ってもらえるとますます嬉しいよ」

『あっ、あの!今度また指導してもらえますか?』

「ああ、勿論だ。そのあとはいつもみたいに飯を食いにいこう」

『はい!』

「だが、あまり無理をするな。夏海は自分に厳しすぎるところがあるからな」

体は大切にしろよ?と頭を撫でていた手が頬に降りてくる
私は頬を染めて俯いた

「今日は隈出来てないな。これからも頑張れよ」

頬を撫でられてどんどん体温が上がっていく

と、その時急に東さんの手が離れた

「東さん。ちょっと触りすぎじゃないですか?」

目の前に随分広い背中が見えたと思ったら犬飼の背中だった
こんなに広かったのかと少し驚いていると、犬飼が東さんを睨み付けるように見た

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