第46章 名前―――荒船哲次
恥ずかしいから…………ってなんだよそれ
「……いいから呼んでみろよ………」
『ええっ!?ムリムリムリッ!!』
「いいから!」
『……て、………てつ………じ……』
「聞こえないな」
そう言われて俯く
意を決して、名前を口にした
『……て……哲次………』
夏海は恐る恐る顔をあげた
途端、抱き締められる
「……あー……思った以上に嬉しいなこれ」
『ちょっ、苦しい!荒船!』
「……………」
更に力を強くされる
苦しくて変な声が出てしまった
「………哲次……だ。呼ばねーと返事しねーからな」
『!?ずるいっ!なにそれ!』
「そうでもしねーと名前呼ばねーだろ?」
その間にも力は強まっていく
これは本当に痛い
『わかったから!哲次!離して!』
「………ん」
名前を呼ぶと素直に荒……哲次は離れていった
「よし、この手でいこう」
『いかなくていいよ!』
「まー、そう言うなって」
笑いながらポンポンと頭を撫でる
夏海が優位だったはずなのにいつのまにか哲次のペースになっていた
『……ムカつく………!』
「はははっ!」