第39章 バレンタイン―――奈良坂透
『はい、奈良坂』
「ありがとう」
いつも通り、昼休みに俺の机まで弁当を持ってきた朝霧
違うのは、今日はバレンタインで、チョコを持っているということ
俺は朝霧のことが好きだ
義理チョコだとしても嬉しい
「食べていいか?」
『どうぞ』
弁当を端に寄せて、朝霧からもらったチョコを袋の中から取り出す
『トリュフだよ』
「いただきます」
口に入れるとチョコの香りがふわり、と香る
と、そこで、俺をじっと見ている朝霧と目があった
その顔はいつもと違い少し不安げだ
「大丈夫。凄く美味しいよ」
『よかった~。奈良坂、チョコ好きだから口に合わなかったらどうしようかと思っちゃった』
ほっとしたように顔を綻ばせる朝霧を見て鼓動が早くなる
「ごめん。朝霧」
俺はそう言って、ゆっくりと朝霧の唇に自分の唇を押し付けた
『………え……?』
「………悪い……」
もとの位置に戻った二人の間には沈黙が降りる
『………どう……して……』
口を開いた朝霧の声は震えていた
「……………きだから」
『………え?』
「俺は朝霧のことが好きだから………キスした」
『……………え!?好き……!?』
途端に真っ赤になる朝霧
『え!?好きって!?』
「そのままの意味だ」
『嘘じゃないよね』
「ああ、でも、気にしなくて――『私も!』――?」
『私も、奈良坂が好き。それ………義理チョコじゃなくて、本命……だから』
「え?これが?本命?」
『う、うん。私……奈良坂以外男子はあげてないし』
「本当か?」
『うん』
恥ずかしそうに視線を剃らす朝霧