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ワールドトリガー【中・短編集】

第37章 バレンタイン――二宮匡貴


今日はバレンタインだ

しかし、大学では一つももらっていない
というより、受け取っていない

ボーダーにいけば、俺の彼女がくれるはず……


そう思っていたのに………


「は?何言ってやがる」

『だから、匡貴にあげるものなんてないって言ってんの』

二宮隊の作戦室
俺が入ると、そこにいたのはオペレーターの氷見と彼女の夏海だった

「どういうことだ?氷見にはあげてるだろ」

『これは友チョコ』

二人の睨み合いが始まり、氷見はおろおろしている

「お疲れさまでーす」

その時、犬飼が入ってきた
夏海が犬飼の方へ歩いていく

『犬飼くん、これ』

「うわっ、うまそっ!ありがとうございます!」

『辻くんにも渡しといてもらえる?』

「あ、了解です」

女子と目すら合わせることができない辻の分も犬飼に渡す

「……夏海……」

『じゃあ、私はこれで!』

「おいっ!」

手を伸ばすが、夏海に触れる前に扉の向こうへと消えていく

行き場のない手をぶらり、と下ろして、頭垂れた

「ん?どうしたんですか?二宮さん」

「夏海さんにチョコもらってないの」

「………あ……。…………ん?二宮さん、ちょっと」

犬飼は椅子を指差す

「……何だ………」

よろよろとまるでゾンビのように歩く隊長に椅子の上においてある紙袋を見せると、二宮の目が光った

二宮はがっつきたいのを押さえて、慎重にそれを手に取る
中を見てみると、大人っぽい箱の上にきれいな便箋

箱を開くと、ガトーショコラとクッキーがあった
ふ、と笑って便箋を手にとって開く

『匡貴へ

きっと素直に渡せないと思うから、手紙を書くことにします。

戦ってる姿も、偉そうにしてる姿も含めて匡貴が大好きです。

これからもずっと一緒に居てください。

夏海』

顔がにやけるのを堪えて丁寧に便箋を折って、紙袋のなかに入れる

そして、扉へ歩いていき犬飼たちを振り返った

「今日のミーティングはなしだ。辻が来たら帰ってくれて良いぞ」

「了解です」

扉がしまるのを背中越しに感じて走り出す

行き先は太刀川隊の作戦室

「太刀川っ!夏海は!?」

「おー、二宮。夏海なら冬島隊の―――」


最後まで聞かずにまた走り出す


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