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ワールドトリガー【中・短編集】

第25章 再会―――奈良坂透


『とーおるっ!』

『透!』

『透!大好き!』

ああ、俺も好きだ

『……透………あのね………お母さんがね……引っ越すんだって………』

「………え……?」

泣きそうな顔をした夏海は俺を見つめた

『……もう……会えないかも……』

そう言ったきり、夏海は口を閉ざした

生まれてからずっと一緒に育ってきた
離れるなんて一度も考えたことがなかった
けど、小学校に入る直前………夏海は俺の前からいなくなった









「………夏海………」

ベットの上で呟いた彼女の名前は空気に溶けていく


今彼女は何をしているだろうか
そもそも何処にいるのだろうか

夏海は俺に引っ越すことを告げてそれから会えないまま行ってしまった
住所はどこだとか、何も聞けていない
向こうから連絡がないためこちらから連絡する手段はない


「………はぁ、女々しいな……俺……」

学校に行かなければならないため、着替えて朝食を食べる
学校に向かって、自分の席につく

すると、クラスの男子の会話が聞こえてきた

「今日、転校生来るらしいぜ」

「へぇ、珍しいな。こっちに来るなんて」

確かに珍しい
ネイバーがいるこの町に来るということはボーダー隊員だろうか?
それにしても進学校に転入出来るということは頭がいいのだろう

少し興味が湧いた



そして、チャイムが鳴り、担任が入ってきた

「転校生を紹介する」

俺も含め、この町に転校してくるやつが気になる
扉に視線が集まった


静かに入ってきたのは女子だった


「……………!」


クラスが歓声を上げる中、俺は時間が止まったように動かなくなった

その女が正面を向く
廊下側から二列目の一番後ろに座っている俺はその女を凝視した


「………夏海………」


夏海は俺を見ると顔を綻ばせた
自己紹介をして俺のとなり、廊下側の席へと歩いてくる
その間、俺はただ見ていることしかできなかった


担任が何かをいって部屋を出ていき、俺がよろよろと立ち上がったとき夏海がクラスの目も気にせず俺に抱きついた

『透!』

「………うわっ………」

倒れそうになったが、しっかりと抱き止める

「え!?どーゆー関係!?」
「奈良坂くんと知り合い!?」

そんなクラスの声が聞こえる

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