• テキストサイズ

【SS合同企画作品】Color

第3章 芸術の秋




「ジャケ買いだよ」

花井君はそう言った。

花井君と私は恋人同士。

今日は、お互いに欲しい本があるということで本屋に行ってきた。
その帰りにファーストフード店で軽く食事をする。

その時に音楽の話になって、どんなアーティストが好きなのか聞いていたら彼の口からは知らないアーティストの名前が出てきたのだ。

「好きっていうか、ジャケットが気になって買っただけなんだよ。でもそれ以来聴いていないから、好きではないのかな、よくわかんねえ」

でも言いたいことはなんとなくわかるような気がする。

私も本を読むのは好き。
でも、全部の本が好きかと言われればそうではない。
買った本だって、何回も読み直す本もあれば一回読んでそれっきり、という本だってある。
きっとそう言うことだろう。

「俺さ、に告白された時嬉しかったんだ。でも好きかと言われればそうじゃなくて」

彼はそう言って、飲んでいたジュースのストローをくるりと回す。
え、じゃあなんで告白した時に頷いたの?

「気になったんだ。友人に冷やかされて俺に告白してきて、フラれたらお前はどうするんだろうって」

そうか、全部知っていたのか。
知ったうえで私の告白を受け止めてくれたのね。

花井君に告白したのは自分の意思ではない。
友人たちに無理やり告白をさせられたのだ。
私が彼女たちに逆らえないから、彼女たちは私を利用する。
彼女たちは私が花井くんにフられるのを期待していたんだと思う。
それで私をからかうつもりだったんだろうし、私もフラれるんもんだと思っていた。
でも、彼は頷いてくれた。

なんで付き合ってくれたのか気になっていたけどそう言う理由だったんだ。

「最初は気になっただけだった。でも、なんだろう。昨日たまたまジャケット買いしたCDを聴いたんだ。そしたら好きだなって思った」

うん?
なんでまた音楽の話になっているんだ?
花井君の言いたいことがよくわからなくて首をかしげる。

『もっと簡単に言って。よくわからない』
「だ~か~ら~」

花井君は顔を赤らめて、私を見る。

「お前のことも、最初は同情からだったよ。振ったらきっとダメだって思った。だからあの時は勢いで頷いたけど、今は違くて……」

彼は頭をガシガシと掻いて大きく息を吸った。

「今はちゃんとのことが好きです」

/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp