第5章 女心と秋の空
『私と別れて』
部活に行こうと教室を出た。
その瞬間、そう言われた。
突然すぎて頭の中で整理ができない。
しかし、1秒もあれば俺の頭は冷静にそれを処理した。
どうやら俺は一つ年上の彼女、さんにフラれたらしい。
付き合ってまだ一ヶ月も経っていないと言うのに。
理由はわからない。
わからないけど、きっと俺が悪いんだろうと思う。
「……わかりました、別れましょう」
本当は別れたくない。
大好きな人だから。
大切にしたいって、傍にいたいって思えた人だから。
でも、俺の我儘で彼女を縛り付けたくはない。
自分の本心を隠して、俺は大好きな人との繋がりを切った。
彼女は踵を返して、何処かへ行ってしまう。
俺は、そんな背中を見送ることもせず部室へ向かうために外へ出た。
外は大雨が降っていた。
先ほどまで晴れていたというのに。
秋の天気は移り変わりが激しい。
彼女の心の移り変わりも激しい。
女心と秋の空とはよく言ったものだ。