第2章 守ってみせる~10年後 獄寺隼人~
白蘭を押し退け、真っ先に十代目との姿を探す。
「彼女、可哀想にねえ。大人しく外で待っていれば良かったのに。」
平然としてマシュマロを口に運ぶ白蘭。
「…ってんめぇぇぇ!!」
匣を取り出し、リングに炎を灯す。
「やめといた方がいいんじゃない?
僕はいつでも大歓迎だけど、二人も抱えて戦えないでしょ?それにさ…
早く病院運んであげたほうがいいんじゃない?」
ここは、ミルフィオーレのアジトだ。
目の前には、敵のボス、白蘭。
傍らには、血を流し倒れる十代目と。
「っ・・・糞が・・・!!」
-------右腕なのに。
お前の・・・彼氏なのに。
俺は、敵の大将を前にして、二人を抱えてその場から去ることしかできなかった。
「…こんなことなら、もっといろんなとこ連れてってやればよかったな…」
ボスの右腕として、秘書として。お互い、デートらしいデートなんて、してる暇がなかったから。
「…これ、お前が欲しがってたやつ・・・」
俺とお揃いのシルバーアクセサリー。
マフィア界が混乱しているなか、合間に作ってたから・・・遅くなっちまったけど。
『隼人のそれかっこいーね、頂戴』
「却下」
『可愛い彼女のお願いよ?』
「気に入ってんだよ!」
『ケチー』
「…そのうち、な」
『約束よー?そういって、何度約束すっぽかされたか・・・』
「っせーなー。」
『ま、首を長くして待ってるわよ。』
情けねえ。
右腕として、男として。
俺は、何も守れなかった。
「・・・そろそろ戻らねえと、」
棺に背を向け、アジトへの道を歩む。
過去をやり直せるなら。
もう一度、お前に会えるなら。
ガタンッ
棺の開く音がし、目を拭って後ろを振り向く。
「お前…」
『あれ、私、なんで』
。
今より髪が長く、化粧っ気のない、幼い顔。
『…未来の、獄寺くん?』
「お前、なんで」
『ランボ君と遊んでたら十年バズーカぶっ放されちゃって…え、ちょっ獄寺くん⁈』
「…ごめん」
『ちょっと、なんで謝ってんのかわかんないんだけどっ』
「うるせーな、黙ってろ」
たった5分だけでも。
「いいか、一度しか言わねえからよく聞け。」
今度こそ、守ってみせる。