第4章 ドジな部下~10年後 スパナ~
『解雇してください。』
・・・何を言い出すかと思えば。
『正一先輩に誘われて入ったけど・・・何やっても役に立たないし、手伝うどころか逆に手をわずらわせてるし…これ以上、迷惑かけたくないんです。』
・・・ウチのために、か。
「…あのな。あんた、ウチがクビにしないのは正一が理由だと思ってる?」
『…それしか考えられません。私自身、仕事できない自分に腹が立ちます』
「・・・あんたが辞めたいと思うなら辞めればいい。正直、あんたがいなくてもウチはひとりでできるから。
でも、ウチから辞めろとは絶対言わない。・・・向いてる向いてないは別として、あんた、やる気「だけ」は一流だからな。ウチは努力している人間がすきだ。
だから、ここにいる間は、ウチが一流の技術者に育ててやる。じゃないとウチの評判が下がる」
『…スパナ様…』
「…冷やせたら、続き。焦らず正確に、だ」
『…はいっ!』
ウチにはドジな部下がいる。
助手としては全然ダメだけど、どこか憎めない。
『完成しました!』
「…やればできるな。ウチなら半分の時間で作れるけど」
『一言多いです、スパナ様っ!!』