青春あやまち論anotherstory 【黒子のバスケ】
第14章 雪ウサギ
思わぬところで自分の名前が出た福井ちゃんは、目を丸くして劉を見上げる。
「俺?え、いつ言った、そんなこと」
「言ったアル。ワタシが日本に来てすぐの頃、日本人は女の人を見たら、まずは声を掛けるって、教えてくれたアル」
「ふーくーいーちゃーんーっっ」
よくも余計なことを…!と、私は、キョトンとした福井ちゃんの首を締めては揺らす。
そんなことも気にせず、福井ちゃんと劉は暫く見つめ合い、そして福井ちゃんがポンと拳を掌に打ち付けた。
「あ、あれか」
「言ったんか…なんてことを言うんじゃ…」
「いや、まあ…ちょっとな」
「ちょっと、じゃないわ!!」
口角を上げて笑う福井ちゃんだったが、その笑顔は引き攣って、「うーん」と私に絞められた首の後ろを掻く。
劉の素直さと、スポンジのような吸収力は知ってるのに!!
何で、こうも余計なことばっかり吹き込んじゃうかな?!
「…もしかして、嘘だったアルか?」
劉は、元々鋭い目をさらに鋭くして福井ちゃんを見つめる。
その様子から、静かに怒っているのが窺える。
「い、いや、嘘じゃねーよっ!でも、TPOってのが、あんだって!」
「TPO…?何アルか、それ」
「えっ!?えっと、あれって何の略だ…?あ、そうだ、アレだよ!『ちょっと・パッション・抑えてこーぜ』の略だよ!」
「ちょっとぱっしょんおさえてこーぜ…?」
訝しげに福井ちゃんに言われた言葉を繰り返す劉。