第2章 水蜜桃の果実
「つばさもまさきもえいしもかずまもゆうとも、みんないるよ!」
「まさか全員サンタの格好じゃないだろうな。」
「ううん、あきらちゃんがにあうからってわたしにきせてくれたの。にあう?」
「…ああ、とても、似合っている。可愛らしいものだな。」
言ってみれば頬を赤く紅潮させてまた嬉しそうににっこりと笑った。「だいちもかっこいいよ!」と楽しそうに言って、手を繋ぎ二人して先程少女が派手に大きな音を立てたままだった扉の外へと向かう。「かっこいい」と言われた照れ隠しにそっと小さな手を握り返して、足を進める。先はパーティー会場、今頃はかなり盛り上がっているだろうと青年も緩く笑みを浮かべた。ふと青年が少女の左手に握られている小袋の中身を尋ねれば、少女は恥ずかしがるような素振りを見せてから、やはりまたにっこり笑った。
「クッキーをやいたの。だいちに、クリスマスプレゼント!」
抱き締めたい衝動を抑えながら、青年の表情は温かく唇は弧を描いていた。
水蜜桃の果実