第10章 変化
える
何事もなかったように、
着せられているワイシャツ。
あまりしわが寄っていないシーツ。
きちんと肩まで掛けられた布団。
不自然なほど、きちんと整えられたこの部屋に、
場違いに見えるような、見慣れた木の机。
手を伸ばせば、それは届く距離にあり、
机の上にあるメモと、私の携帯を取る。
あ、カバーがない。
見慣れた星空が描かれた携帯カバーがない。
結構気に入ってたのにな。
改めて、目をメモに落とす。
おはよう。起きたか?
具合が悪かったら無理に起きるなよ。
医務室から出るなら、車椅子を使え。
アームを操作すれば、基本力がなくても
どこでも進めるだろう。
衰えた筋肉を戻したいなら手動でもやってみろ。
でも無理はすんなよ。
それから、青の塔の奴らの連絡先だ。
とりあえず全員との連絡が取れる状況にしとけ。
連絡貰えば、いつだろうと行くから
ちゃんと待ってろよ?
連絡先?
どこ?
机の上にはない。
片手にメモを持ったままでは探しにくい、と
一旦机にメモを置くと、
待ってましたと言わんばかりに
音を立てて紙が落ちる。
はい、重なってました。
きっちりとした字で、名前と連絡先がメモされていた。
そして、その裏には
俺のは登録しとけよ
俺からは連絡しない
連絡待ってるからな
「やっぱり、かっこいいや」
寂しさを埋めてくれた人。
あったかさをくれた人。
好きになりたい人。
好きになれない人。
メッセージを送ると、すぐにその返事は返ってきた。