第1章 いま、
月島side
嘘だと言ってほしかった。
………………………時は、3ヶ月前。
「………………あっ、そう。」
本当に驚いたときほど、人間はろくな返しができないものだと、僕はこの日、改めて知った。
「ねぇ?ちゃんと聞いてる??…ツッキー?」
「…………聞いてるよ。彼女と暮らすんでしょ?」
まさかだけど、山口に先を越されるとは思ってもみなかった。
別に、彼女がほしい訳でもない。
ただなんとなく、山口が、それを理由にルームシェアを解消しようと言ってくるとは、想像してなかっただけ。
「……フられて戻ってきても、知らないよ?」
山口の彼女は、僕達の幼馴染みで同い年。
幼馴染みとは言っても、中学卒業とともに、彼女は親の仕事の都合で、カナダに行ってしまった。
僕も連絡先は知っていたけど、なんとなく、急に開いた距離が気恥ずかしくて、積極的に連絡はしていなかった。
それでも、年始の挨拶や、互いの家族の誕生日のお祝いメッセージは、お互い毎年メールで【おめでとう】と、送り合っていた。
小中学生の頃、いつも僕の隣に居た彼女の居場所は、
気がつけば、
山口の隣になっていた。