第84章 【ホントウハ】
学園祭2日目、昨日は英二くんから逃げ回って、でも不二くんの弟さんの裕太くんに会えたり、大石くんと再会して香月くんやナオちゃんにお礼を伝えてもらったりして、それから不二くんと学園祭を見て回れて基本的には楽しく過ごせた。
でも今日は英二くんと鳴海さんのミスコンがあって……
ちょうどその真っ最中はクラスの当番が入っているから、その姿を目撃する心配はないんだけど、模擬店のブースはミスコン会場の中庭に近いから、音声だけは嫌でも耳に届くのが分かりきっていて、とにかく憂鬱で仕方がなくて……
「おはよー、璃音!今日も頑張ろうね!」
朝の教室、肩をポンと叩いて挨拶してくれる美沙に、はい、そう返事をすると、うん、頑張ろう……、なんて自分自身に言い聞かせる。
泣いても笑っても、今日で学園祭はファイナル……
どうせなら、楽しく笑って終わりたい……
カバンの中から英二くんに作ってもらったネコ耳カチューシャを取り出すと、いくら考えないようにしていても、英二くんに振られたあの時を思い出して涙がにじむ。
すーっと大きく深呼吸をして、それから頭に装着した。
「璃音、これ、洗い物、向こうに持ってって!」
「あ、そのついでに揚げ玉と紅生姜、貰ってきて!」
クラスの模擬店の担当と言っても、究極の不器用な私が出来ることはさほど多くなくて、でも基本的に裏方の仕事を地味にコツコツしているタイプだから、自然と私の元にはたこ焼きを作るなんて派手な仕事は回ってこなくて……
ああ、良かった……、そうホッと胸をなでおろす。
学園祭は今日も沢山の人が来ていて、クラスのネコ耳たこ焼きも大盛況で、裏方を中心に慌ただしく走り回って……
「ね、ミスコン、誰に投票する?やっぱ英二の彼女?」
「あー……あの子、正直ウザいけど、英二だもんねー……やっぱそうしとく?」
「もう、璃音が出てくれれば、迷わず璃音と不二くんに投票したんだよ?」
そんな中、自然と話題の中心はミスコンになって、すみません、私、目立つのは……、そう声をかけてくれる女の子たちに苦笑いで返事をした。