第81章 【ゲンジツトウヒ】
「小宮山さんとはいつ別れたのよ?」
「……芽衣子ちゃんと付き合い出した時……」
「乗り換えたの?」
「……まぁ……」
芽衣子ちゃんとしばらく抱き合って、それから一緒にお昼でも、なんて言い出したかーちゃんの誘いを断って外に出掛けて、適当にぶらついてから芽衣子ちゃんの家に行って……
今夜こそ、1人にしないでくださいね?、そう上目遣いでされたお願いを快く引き受け、そのまま日曜日の夜までずっと一緒に過ごしてからやっと家に帰ったオレに、ねーちゃんは冷たい目で尋問した。
「……英二、あんた、本当にいいの?」
大五郎だって……、そう言葉を濁したねーちゃんの言いたいことは分かってる。
他の誰にも貸せない大五郎を、小宮山にだけ貸せるのは、それだけ小宮山がオレにとって特別だってこと……
「お姉ちゃん、そんなこと言ったって仕方がないじゃない……まだ高校生なんだから……」
「分かってるよ、そんなこと!、そりゃ、高校生から付き合いだして、そのまま一生、なんてそうないってことくらい、私だって分かってるけど……」
でも英二と小宮山さんは、上部だけじゃなく、もっとずっと深いところで繋がってるって、そんな風に感じていたの!、そうオレのことなのに感情剥き出しのねーちゃんが涙ながらに訴える。
オレだってそう思ってたさ……一生、ずっと小宮山を大切にするって……
菊丸家のような、賑やかで幸せな家庭を作るんだって、思っていたけど……でも……
「んなの、ねーちゃんにはかんけーないじゃん!」
もう放っといてよ!、いたたまれずに叫びながら自分の部屋へとダッシュする。
バンッと大きな音を立ててドアを閉めると、そのままベッドに飛び込み大五郎のお腹に顔を埋める。
大五郎の丸いお腹に出来る水痕は、乾く暇もないほど何度も繰り返されて……
それはこのまま、シミになって消えることなんかないんじゃないかって思うほどで……
「大五郎……オレ、あの頃より、ずっとメチャクチャだ……」
見上げた大五郎の顔は相変わらず無表情で……
なんか言ってよ……、ポツリと呟くと、また新しく出来た水痕が大きくなった。