第79章 【ワナ】
「小宮山っ!!」
バンッ!!勢いよく扉が開く音がして、聞こえて来たのは私を呼ぶ声……
え、英二っ!?、慌てた男たちが私の口と身体を解放する……
視界がひらけてぼんやりと見えたのは、目を見開いて私を見る英二くんの姿……
その顔がみるみる怒りのものに変わる。
「……おまえら、小宮山に何してんだよっ!」
「お、落ち着けって、まだ挿れてねーから!!」
そういう問題じゃねーだろ!、そんな英二くんの叫び声と同時に、ドガッ!と響いた鈍い殴打音……
それから、テーブルが倒れてガシャンとグラスの割れる音に、キャー!っと女の子たちの叫ぶ声……
「英二、悪かったって!、本当、もうしないからっ!」
「お前ら、喧嘩なら外でやれ!」
バタバタと慌てて逃げていく男たちの足音……
私たちも帰ろ?、そそくさと女の人たちも帰っていく……
騒然とした空気が落ち着くと、小宮山……、そう言って英二くんが私の顔を覗き込む。
英二くん……来てくれたんだ……
鳴海さんとデートなのに……
どうして、私がこんな風になってるの、分かったんだろう……
「ゴメン……小宮山……本当に……ゴメン……」
私を包み込む英二くんの全身が震えている。
私の頬を濡らすのは私の涙……?
それとも英二くんが泣いてるの……?
それにどうして英二くんが謝るの……?
英二くんは何も悪くないよ……?
英二くん……
英二くん……
英二くん……!?
「……イヤァァ!!」
どこか他人事のように感じていた出来事が、我に帰った途端、一気に現実のものとなって私の心を押しつぶす。
「イヤァァ!見ないでっ!こんなの!!英二くんに見られたくないっ!!」
慌てて英二くんを突き飛ばすと、着崩された服を引き寄せ身を隠す。
恥ずかしくて、悲しくて、惨めで、苦しくて……
「見ないでぇ……」
泣き崩れる私を、英二くんは呆然とした表情で見ていた……