第14章 【キュウジツ】
特に予定のない土曜日、自宅にいてもなんとなく気がめいるオレはふと商店街まで出てきていた。
「ちぇー、誰も捕まんねーの」
不二や乾はテニス部の練習、タカさんは店の手伝いで忙しい。
大石も今日は学校行事が入っているとか。
他の友達とは休日まで一緒に過ごす気になんないし、声をかけたらホイホイ喜んで出てくる女ならいくらでもいるけれど、でも女って気分でもない。
はー、オレってホント、実はコドクー、そう思いながらハァーッとため息をついて、携帯を操作する。
ふとそのアドレス帳の1ページでスライドする指がとまり、その名前を見つめる。
小宮山……かぁ……
最近、小宮山は前とちょっと違う。
朝、挨拶をしたときにぎこちない笑顔を見せるようになった。
最初、その笑顔を見た時は一瞬すごいドキッとした。
別に小宮山にドキッとしたわけじゃなく、あの小宮山が笑ったことにドキッとした。
でもそれ以外の小宮山は普段通りの小宮山で、相変わらずツンツンして過ごしていた。
そんなある日、登校したら下駄箱に手紙が入っていた。
あー、またね、そう思いながら確認すると、一年生だって子からの呼び出しの手紙だった。
その女の子はめちゃくちゃ可愛かったけど、いつもの決まり文句でそれを断る。
学校関係じゃ小宮山以外とイイコトするつもりもないし、第一、本気の子にこんなオレじゃ悪いじゃん?
相手が身体だけの関係でもいいってタイプなら別だけど。
そんな風に思ったところで、んじゃなんでオレ、小宮山とこんな関係続けてんだろ?なんて思った。
ま、一言で言うと、あいつのナカがすげーキモチイイからなんだけど。
そういや小宮山、あいつそろそろ終わんじゃないの?
いい加減、オレ、限界なんだけどーなんて思いながら、校舎に戻ろうと振り返ったら、茂みの奥に見覚えのあるサラサラの黒髪が見え隠れしていた。