第76章 【アノヒ】
青く澄み渡る空、高く、遠く……
秋空の薄く広がる白い雲に、一生懸命羽ばたく鳥たち……
遮るものが何もない空……
屋上の上の上から見上げる青は、いつもと何も変わらない。
何も変わらないのに、何かが違う……
ゆっくりと手を伸ばす。
届かない何かに……
それは幼い頃の自分と同じ……
いや、同じなようで、全然違う……
同じなのは、もう2度と手に入らないということ……
違うのは、自分から手放したということ……
ゴメンな、小宮山……
オレ、本当に小宮山のこと、すげー好きなんだ……
今まで言った言葉も行動も、決して嘘なんかじゃない……
嘘なんかじゃないんだけど……
でも……
もう、決めたから……
小宮山じゃなくて、芽衣子ちゃんを大切にするって……
もう、決めたことだから……
「ふわぁ……」
大きなあくびが空へと溶けていく……
ここなら寝れるかと思ったんだけどな……
はぁ……、あくびがそのままため息へと変わる。
あの日から続いている満足に寝れない日々……
いくら眠くてベッドに入り微睡んでも、すぐに息苦しさを覚えて目を覚ます。
いくら大五郎を抱きしめても、決して消えない胸の痛み……
あの日から、もうずっと……