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【テニプリ】闇菊【R18】

第74章 【ウチコメルモノ】




パコン……パコン……


生徒会の仕事が終わり、いつものように帰ろうとすると、もう部活動の時間も終わってるというのに、テニスボールを打つ音が響いてきた。
まだ誰か残っているんだ……、そう不思議に思いながら不二くんを見上げると、少し覗いていっていいかな?、そう彼が私に問いかける。


一緒に向かったテニスコートでは、すっかり真っ暗になった中、無機質な照明機器に照らされて、1人、桃城くんが壁打ちをしていた。
その一心不乱にボールを追いかける顔は、大好きなテニスをしているというのにすごく苦しそうで……
桃城くんはきっとテニスに打ち込むことで、鳴海さんのことをなんとか消化しようとしているんだろうな……、なんて思って胸が苦しくなった。


「桃城くん……苦しそうですね……」

「桃も、昨日、英二に聞かされた時は大変だったよ……英二に殴りかかろうとするのを必死に止めてね……」


そうなんだ……
英二くん、桃城くんともちゃんと向き合ったんだ……
それだけ真剣に、相当な覚悟で鳴海さんを選んだっていうことなんだよね……


パコン……パコン……バコッ!


毎回、桃城くんのところにちゃんと戻っていたボールが大きく逸れた。
クソッ!、そう桃城くんが声を荒げ、地面に強くラケットを投げつける。
カラカラと乾いた音を響かせながら、それは私の足元まで転がってきた。


「チッ、なんでだよ……」


桃城くんの苛立ちと切なさが混じり合ったような辛そうな声……
項垂れてその場に座り込み、鳴海……、そう小さく呟く。
暗闇ではっきり見えないその目元には、どうしようもない胸の痛みと光る涙が見えた気がした……


「不二先輩……と、小宮山、先輩……」


ラケットの行き先を視線で追った桃城くんが私たちに気がつく。
黙ってペコリと頭を下げると、桃城くんは目元をグイッと拳で拭い、少しバツ悪そうに私たちから視線を逸らせた。

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