第71章 【ドヨウビ、ヒルサガリ】
必死に祈りながら迎えた真夜中の12時……
あの後、英二くんからの連絡は一切なくて……
それどころか、毎晩必ずくれていた電話さえも、まだ来てなくて……
いくら遅くなったって、いつも日付が変わる前には電話してくれていたのに……
まだ鳴らない携帯電話をジッと眺め続ける。
英二くん……どうして電話してくれないの……?
こんな事になるなら、バイト先になんて行かなければ良かった……
大人しく家で待っていたら、英二くんが来られなくなったことも素直に信じていられたし、電話が来なくたって単純に寝ちゃったのかな?って思えたもの……
何度も脳内で繰り返す、英二くんと鳴海さんの楽しそうな姿……
慌てて首を振って追い払うと、急いでLINEを開いてメッセージを打ち込む。
『英二くん、今日は寝ちゃいました……?』
しばらく待ってもつかない既読表示……
本当に寝ちゃったんだよね……?
わざと無視してるわけじゃないよね……?
おやすみなさい、続けて送った恒例の挨拶……
いつもは直接言い合っていたのに、今日はそれに応えてはくれなくて……
カーテンをそっと捲り外を眺める。
いつの間にか降り始めた雨が、音もなく真っ暗な街を濡らしていた……