第71章 【ドヨウビ、ヒルサガリ】
土曜日____
今日は母が久しぶりの休日出勤で、朝から張り切って家中の掃除をしていた。
これで大丈夫だよね……シーツも布団カバーも取り替えたし、お風呂もさっききれいに磨いたし……
って、これじゃ、私、気合十分みたいじゃない!
恥ずかしくてドキドキして、胸がソワソワして落ち着かなくて……ジッとしていられずにベッドにバフンと身を沈める。
「あ、あの、英二くん、明日……お母さん、久しぶりに休日出勤になって……その、良かったら……」
『マジで!?んじゃ、久々に小宮山とゆっくり出来んじゃん!』
昨夜のいつもの電話……
うちに来ませんか?、そう言い終わる前に携帯の向こうから聞こえた英二くんの嬉しそうな声。
その声に私も嬉しくて、はい、そう返事をして幸せを噛みしめた。
でもすぐに英二くんは、あー……って言葉を濁して、どうしたんだろう?、そう不思議に思ってその続きを待つと、ゴメン、明日さ、バイト入ってんだ……、なんて彼は残念そうに話しをした。
「えっと、夕方からですよね……?、やっぱりバイトの前じゃ忙しいですか……?」
『違くてさ、明日はあの辺の小中学校で学校行事があるらしくてさ……出られないパートのおばさんたちの代わりに、オレら学生バイトは昼間から総動員なんだよねん……』
そっか……、それじゃ、やっぱりダメだよね……
残念だけど、わがまま言えないもん……
それじゃ、また次の機会に……、なんて言いかけた私の声を、だいじょうび!、そう英二くんの明るい声が打ち消した。
『3時には終わるからさ、その後、行ってもいい?、4時くらいになっちゃうけど』
ゆっくりって訳にはいかないけどさ、2時間くらいなら一緒に居られるよん?、その英二くんの言葉に、落ち込んでいた気持ちが一気に浮上する。
はい!、待ってます!、嬉しくてつい答える声が大きくなると、小宮山、必死すぎだろ〜、そう言って英二くんは嬉しそうに笑った。