第69章 【ゼンチョウ】
「もし、事前の人気投票で上位に選ばれると、ファイナリストとしてメインステージでの最終投票になるらしくって……」
へぇ〜、そんなシステムになってんだ……
まぁ、芽衣子ちゃんなら確実にファイナリストに残るんじゃないの?
小宮山だって参加してたら絶対選ばれるだろうけど。
「それで……、ファイナリストはその……、男の人にエスコート……してもらうことに、なっていて……」
モジモジと指を絡ませながら、言いにくそうにオレを見上げるその芽衣子ちゃんのセリフに、まさか……、そう目を見開いてその顔を見る。
「あの……先輩さえよかったら……そのエスコート役、先輩に……」
「絶対ヤダ!」
先輩にお願いできませんか?、恐らくそう言おうとした芽衣子ちゃんの頼みを、有無を言わせず断った。
冗談じゃないって、そんなことしたら、ますます学校中から騒がれるじゃん!
……まあ、オレ以外がエスコートしても、別の意味で騒がれるだろうけど……
「やっぱり、ダメですよね……」
「あったり前じゃん……クラス模擬店断られた段階で、普通分かんだろ?」
「そうなんですけど……でもダメ元で」
ペロッと舌を出して残念そうに笑うその仕草に、なんつーか、芽衣子ちゃんって本当、めげないよな、そう思わず苦笑いしてしまう。
これが小宮山だったら、すげー泣きそうになって、でも必死に我慢して、ごめんなさいって謝んだろうけど……
まあ、そもそも小宮山がそんなお願いなんか、してくるはずないけどさ。
「……つうか、ほんとに分かってる?、あん時が最後って何度も言ってんじゃん」
「それは分かってますけど……でも学校ではともかく、バイト先では普通に先輩と後輩じゃダメですか……?」
せっかくだから、楽しく働きたいじゃないですか……、そう伺うような視線を送ってくる芽衣子ちゃんのその申し出に、それもそうだな……、なんて妙に納得しちゃって……
バイトんときだけだかんね……?、そう視線を逸らして吐き捨てるように呟いたオレに、はい!、そう芽衣子ちゃんは嬉しそうに笑った。