第69章 【ゼンチョウ】
「ほいっ、ほいっ、ほいっ、たこ焼きなんて簡単じゃん?」
みんな、分かったー?、学園祭の準備期間、家庭科室で行われてるたこ焼きの実践練習でお手本を見せる。
最近は家にたこ焼き機がある家庭も多いから、なんとなくやった事がある子も結構いるんだけど、やっぱ業務用の大きなたこ焼き機じゃだいぶ勝手が違って……
でも料理が得意なオレは、ちょっと練習したらすぐに絶妙のカリトロたこ焼きをマスターすることが出来た。
「簡単って、それこそ簡単に言うなよなー!」
「ちょっと熱いんだけどー、もうやだぁ〜!」
文句を言いながらもみんな楽しそうに練習していて、そんな様子にうんうん、みんな頑張ってちょ、なんて頷きながら言うと、オレ、ちょっと教室の方に行ってみんねー、なんて家庭科室を後にする。
小宮山、今頃、教室でなにやってんのかな……?
当日は生徒会で忙しい小宮山は、あまりクラス模擬店には顔を出せないから調理は担当外。
ごめんなさい、そう謝りながらもホッとしている顔が可愛くて、笑いを堪えるのに必死になった。
「やっほー、こっちはどんな感じー?」
教室のドアを勢いよく開けると、みんなが一斉に振り返る。
なに?、もう練習終わったの?、そうかけられる声に、完璧パーペキ、パーフェクト♪、なんてブイサインをする。
小宮山の席では市川や他の数人の女子が集まっていて、その中心から小宮山がオレにこっそり笑顔を向けてくれた。
「なーにやってんの?打ち合わせ?」
「うん、璃音が正式な見積書、作ってくれたから」
「へぇ〜、さっすが小宮山さん、慣れてるねー」
自分の席に戻りながらその輪の中に入り込むと、イスじゃなく机に座って上から中心の見積書を覗き込む。
でもオレにはその内容がまったく理解できなくて、ほえ〜、全然わっかんないや、なんて苦笑いをした。
「璃音、バカにもわかるようにちゃんと説明してあげて!」
「むー、なんだよ、そう言う市川はわかってんのー?」
「……私に理解出来ると思う?」
そんなオレと市川の会話にみんなが大笑いする。
構いませんよ?、そう言いながら小宮山も一緒になってクスクス笑った。