第68章 【ムナサワギ】
「やっぱり生徒会の仕事、キツイかな……?小宮山さん、人一倍働いてくれているから……」
ハッとして顔を上げると、不二くんが眉をひそめて私の顔を覗き込んでいた。
鳴海さんとのやりとりを思い出して、またしてもボーッとしてしまい、さらに心配をかけてしまったことを申し訳なく思う。
本当に大丈夫です、そう慌てて首を振って笑顔を作った。
「……あの、不二くん……」
鳴海さんのこと……聞いてもらおうかな……?
誰かに聞いてもらったら少しはスッキリするかもしれない……
美沙には英二くんの過去を話せないし、英二くんになんてもっと言えるはずないし、不二くんにならって思ったんだけど……
「……なにかな?」
「……あ、いいえ……なんでもないんです……」
不二くんなら私の話を親身になって聞いてくれるのは分かっているんだけど……
なんでも話してほしいと思ってくれているのも分かっているんだけど……
でも、もともと自分のことを話すのはすごく苦手だし、やっぱり鳴海さんのことなんだから、例え不二くんにでも勝手に話しちゃダメだよねって思い直して……
「学園祭に向けて、頑張りましょうね」
心配をかけないように無理に笑って不二くんを見上げると、彼は少し困った顔をして、それから黙って微笑み返してくれる。
不二くんのことだから、きっと本当は私が悩んでいるのを分かっていて、それでもなにも聞かないでくれているんだよね……
まるで私の両親と同じ……
暖かくて静かな、でもとても大きな優しさ……
「言いたくなったらいつでも聞くよ」
そう言って不二くんが私の頭を優しく撫でる。
不二くんってまるで私のお父さんみたい……、そう呟いてその撫でられた頭に触れると、それって喜んでいいのかなぁ……?、なんて彼は複雑そうな顔をして笑った。