第68章 【ムナサワギ】
「お邪魔しました、すっかりご馳走になっちゃった挙句、お弁当まで……本当にありがとうございました」
「いいのよ、またいつでも遊びに来てね?、璃音とこれからも仲良くしてね?」
「はい、もちろんです!」
次の日の朝、美沙と一緒にお母さんに見送ってもらって自宅を出る。
あんた、いっつもこんな早く出んの?、すごいねー、そんな風に大きなあくびをしながら美沙が背伸びをする。
美沙の家は学校のすぐ近くだからか登校はいつも始業ギリギリで、つまりはもっとゆっくり寝てるみたいだから今朝はちょっと眠そうで……
それでも、ぼーっとしながらも、朝食は大きなお茶碗でご飯3杯も食べて来たところは、さすがなんだけど……
美沙と……というか、誰かと並んで登校するのは初めてだから、なんかとっても新鮮で……
すっかり高くなった秋晴れの空も、頬にかかる髪を揺らす涼しい風も、いつも見慣れた通学路の光景も、どれもみんな普段より素敵に見えるからすごく不思議で……
英二くん、今日は学校で大丈夫かな……?
例の公園のところに差し掛かると自然とそちらに目がいってしまう私に、本当だったら英二と待ち合わせして登校したりしたいよね……、なんて美沙がボソッと呟く。
そうですね、思わず本音で返事をしちゃって、それから慌てて、あ、いいえ、そんなことは!、なんて恥ずかしくて首を横に振った。
「私は今のままで幸せなんです」
「でもやっぱ嫌じゃない?彼氏が別の女子と噂になってるって」
「まぁ……でも別に構いませんよ、事実じゃないですし、私だって不二くんと噂になってるのでお互い様です」
いや、どっちも英二が蒔いた種じゃん、お互い様じゃないって、そう言って美沙が呆れ気味に笑うから、それはそうなんですけど、なんて私も苦笑いで答える。
それに多分、一番辛いのは鳴海さんだもん……
好きな人の彼女じゃないのに周りから彼女扱いされるって、すごく辛いと思う……
そんな思いを声にした私に、それを言うなら、若干もう一名、かな、なんて美沙はポツリと小さく呟いた。