第67章 【ユウアイ】
それから桃城くんと一緒にテニスコートに行って、改めて乾くんと不二くんに今日のお礼と、海堂くんにも騒ぎを起こしたことの謝罪をした。
相変わらず乾くんは何かをノートにサラサラと書いていたし、不二くんは私にニコニコと笑ってくれて、それから、また騒ぎを起こしたって?、そう言って桃城くんには怖い笑みを浮かべていた。
海堂くんも口数は少なかったけど小さく挨拶してくれて、大丈夫っすか?、なんてさり気なく気遣ってくれるから、見た目はちょっと怖いけど、本当に優しい人だなって改めて彼を見直したりした。
練習が始まる時間になって、邪魔しちゃ悪いから、以前見学した部室の側の木の下からしばらく練習の様子を眺めた。
相変わらず女の子たちがたくさん見学に来ていて、部活に励むみんなの声やボールを打ち合う音が心地よく響いてきた。
前に見にきた時は体育祭の準備の後、英二くんを怒らせてしまって、落ち込んだまま何気なく立ち寄ったんだったっけ……
あれから色々変わったけど、英二くんのことで気持ちが沈んでいるところはおんなじだな……
英二くんからは相変わらず連絡は来なくて、何度か携帯を覗いて見ても、未だにLINEに既読はついてなくて……
今日はバイトの日だったよね……
あんまり何度も送ったら迷惑かな……?、そう思って迷ったけれど、バイト頑張ってくださいね、そう一言だけまたメッセージを送った。
だけどやっぱり既読は付かなくて、私の送信したメッセージだけが寂しそうに上下に並んでいた。
暫く見学をしながら英二くんの返信を待っていたけれど、結局、既読は付かなくて、吹き抜ける秋の風も冷たく身体を冷やすから、……帰ろ、そう呟いて教室まで戻る。
「……美沙、まだ残っていたんですか?」
もう誰もいないだろうと思っていた教室には美沙だけが残っていて、私の声に振り返った美沙は、璃音ー!、そう怒り混じりの声を上げる。
どうしたんですか?、不思議に思って問いかけると、沼田のやつ、また逃げやがった!、そう叫んで美沙は机の上に積まれたプリントの山をバンッ!と叩きつけた。