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【テニプリ】闇菊【R18】

第12章 【ミカヅキノヨル】




春に咲き誇る満開の桜の美しさだとか、夏の火照った身体を癒やす風の爽やかさだとか、秋の夜長を彩る虫の音の安らぎだとか、冬の夜空に舞い散る粉雪の切なさだとか……


そう当たり前のように感じる気持ちを、誰にも止められないように、私が英二くんを好きだと想う気持ちも、自分ではどうにも出来ないものになっていた。


美しいものを見てうっとりするように、おいしいものを食べて幸せを噛みしめるように、素晴らしい音楽を聴いて感動するように、面白い本を読んでワクワクするように……


英二くんはいつでも何をしていても、私の胸を高鳴らせ、そしてきつく締め付け続ける。


部屋の窓辺に座り、夜空の月を見上げる。
それは細い細い、今にも消えてしまいそうなほどの頼りない三日月。


それはまるで今の私の心のよう。


それでいて、どこか英二くんのようにも思えるのは、初めて出会った日の公園で、雨空を見上げる彼の、あの寂しそうな顔を思い出させるから……?


あの日、ネコ丸を優しく包んでいた彼のタオルを、膝の上でそっと撫でる___


時刻は10時半を告げている。
英二くんは今頃、どこかで知らない誰かを抱いているのかな……


目から一滴、もう一滴と、涙がこぼれ落ちた。

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