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【テニプリ】闇菊【R18】

第65章 【トオイヤクソク】




「んー……、ここの隙間に玉子焼き入れてっと……」


キッチンに漂う美味しそうな香り、時間差で朝食を済ませ忙しそうに走り回る家族たち。
それは大家族である菊丸家のいつもの朝の光景、そんなキッチンの片隅で弁当箱におかずを盛り付ける。


「うんにゃ〜、今日も自信作っ!」


美味しそう〜、なんて詰め終わったばかりの自分の弁当箱を満足げに眺める。
お弁当を包んで朝食を済ませると、洗面所に移動して入念に歯を磨く。
オレの一番のお気に入りは定番のペパーミント味、にいっと笑って白い歯をキラリと光らせた。


「ちょっと、英二!終わったんならはやく避けてよ!あとが詰まってるんだからっ!」

「もうちょっと待ってよ、まだ髪の毛のセット終わってねーの!」


相変わらず面倒臭い子ね、大して変わんないわよ、なんて睨まれながら、急いでヘアワックスを揉み込んでドライヤーでセットする。
こんなに可愛い弟に対して、なんて言い草だよ、そう鏡越しにんべっと舌を出した。


「英二、今日はバイトの日だったかしら?」

「そだよん、帰りは遅くなるけど心配しなくていーかんね」


玄関で靴を履きながら、見送ってくれるかーちゃんに、行ってくんねと挨拶をする。
ドアを開けて空を仰ぐとすっかり高くなった青空を眺める。


……もう10月だもんな。


新学期になって1ヶ月も経つと、小宮山はすっかり市川と仲良くなって、その影響から他の女子たちともだいぶ打ち解けて、もう学校でもオレの前のような自然な笑顔で過ごしていた。


以前、小宮山に嫌がらせしていた不二のファンたちも、面白くない顔で見ていることはあったけど、周りの連中に諌められて、もう直接なんかしてくることもなかったし、生徒会執行部の連中とも雑談をしながら仕事に励んでいるらしい。


オレはというと、相変わらず小宮山は放課後忙しくゆっくり会うこともできないし、他の友達も塾だ部活だって構ってくんないから、暇な時間の有効活用っつうことで、夕方から夜までレンタルショップでバイトを始めた。

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