第63章 【ジンセイノカテ】
あぁ……緊張した……
クラス委員が決まると私の仕事も終わり、ホッと胸をなでおろしながら自分の席に戻る。
前に出ることなんていつものことで、新入生代表挨拶や弁論大会のときの全校生徒の前でのスピーチだって、ぜんぜん緊張しないのに、自分の気持ちを即興で声にするって本当に大変……
でもちゃんと市川さんにお礼が言えて、そして今までのことも謝れて本当に良かった……
突然だったからその事しか言えなかったけど、それでも市川さんが笑ってくれて嬉しかった……
はぁ……、安堵からのため息が溢れる。
自分の席まで戻ってくるとこっそり英二くんが手を伸ばして迎えてくれる。
英二くん、応援してくれて、見守ってくれて本当にありがとう……
こっそり見つからないように、その指に触れると、英二くんは一瞬だけギュッと摘む指に力を込めてくれた。
「へぇ、英二と小宮山さん、隣なんだ。どんな手、つかったの?」
終業式、午前のみの授業が終わると、早速今日は生徒会執行部の顔合わせがあって、それに迎えに来てくれた不二くんが隣同士の私たちを見て目を見開く。
なんもしてないよっ!、そう英二くんが言い返したけど、もう不二くんはそんな言葉聞いていなくて、それじゃ、小宮山さん行こうか、そうにっこりと私に視線を向けた。
あ、はい、そう荷物をまとめて立ち上がり、それでは菊丸くん、さようなら、そう少し寂しく思いながら挨拶すると、さようなら、菊丸くん、そう不二くんがゆっくりと復唱して笑うから、英二くんは面白くなさそうに、ちぇーっと唇を尖らせる。
それから私に視線を戻し、いつもの笑顔で見送ってくれた。
「ねえ、不二くんっ!、生徒会執行部の顔合わせってどのくらいかかるの?」
教室を出たところで不意に掛けられた声に足を止める。
あ、市川さんだ……、そう慌ててペコッと頭を下げて、2人から数歩距離を取る。
一時間くらいだけど……どうかしたの?、そう不二くんが答えると、じゃさ、そう市川さんは私の方を見て、今日、小宮山さん、貸してくれない?、そう言ってニコニコと笑った。