第62章 【シンガッキノケツイ】
「そ、そんなことより、クラス委員です!どなたか、立候補してください!」
顔を上げた小宮山は、赤い顔をしていたけれど、それ以外はすっかりいつものツンツンに戻っていて、そんなギャップに教室内から笑いが起こる。
「だから、どなたか速く立候補してください!もうクジにしますよ!」
あー、小宮山、恥ずかしさのあまり止まらなくなってる。
やべ、かわいい……、ゆるむ口元を慌てて手のひらで覆う。
すると小宮山と目があって、オレがバカにして笑ってると思ったのか、ますます真っ赤になりながら、口をパクパクさせた。
「いいよ、小宮山さん、私、やるから」
それは立ち上がったまま嬉しそうに微笑んでいた市川の申し出、あ、男子は沼田ね!、そう一人の男子を指さして言う。
「な、なんで俺なんだよっ!」
「あんた、一学期、男子の委員だったくせに小宮山さんに全部押し付けて何もしなかったでしょ!」
私は小宮山さんと違って優しくないから、覚悟しなさいよ?、ニヤリと笑う市川、最悪だー!、そう沼田が頭を抱えてクラス中が笑いに包まれる。
あー、こんな和やかな状態で委員が決まるの、このクラスじゃ初めてだな……
「ほら、さっさと担任呼んできなさいよ、ついでに小宮山さんに謝んな!全部押し付けてすみませんでしたって!」
「ひいっ、小宮山、ゴメン、悪かったよっ!」
市川と沼田のさながら夫婦漫才でクラス中が笑いに包まれる中、沼田に謝られた小宮山は恐縮しながらもどこかホッとした様子で……
「いえ、私の方こそ、使えないやつ、なんて思っていてすみま……す、すみませんっ!」
更に沸き起こる大爆笑、ウルサいぞっ!隣の担任が文句を言いに乗り込んでくる。
赤い顔をしてアチコチに頭を下げる小宮山を、一番後ろから頬杖をついて微笑ましく眺める。
「小宮山さんって、案外怖くないかもね」
「うん、私もそう思ったー!」
近くの席から聞こえてきた女子達の会話、良い方向に風の流れが変わったのを感じて嬉しく思う。
もう一度、小宮山に視線を戻すと、相変わらず真っ赤な顔でペコペコ謝っていた。