第62章 【シンガッキノケツイ】
「でもまた不二くんに迷惑掛けちゃいますよね……、結局、噂に巻き込んだままになっちゃうんですから……」
唇が離れると小宮山はそう不二に対して申しわけなさそうに眉を下げるから、いつもオレと小宮山の支えになる陰で、その胸を痛ませている不二の寂しそうな笑顔を思い浮かべた。
本当、小宮山はオレのだー、なんて釘刺しといて、結局、不二に頼らないといけないなんて、これ以上情けないことないよな……
もともと、不二と小宮山がつき合ってるって噂になったのだって全部オレが悪くて、それまでのオレの行動から小宮山を不安にさせちゃって、それより何より恋人同士になったって、結局、堂々とさせてやれなくて……
本当、後悔することだらけだ……
そうため息をついて目を伏せると、英二くん、そう小宮山はオレのシャツの袖をちょいっと引っ張った。
「英二くんは……その、大丈夫ですか……?、私が不二くんと噂になったままなの……」
そう不安定なオレの心を心配してくれる小宮山に、大丈夫だって、そうその前髪を摘まむように撫でると、まだ不安そうな顔をしているその身体をギュッと包み込だ。
「小宮山を守るためならさ、オレ、そんな噂くらい、いくらでも我慢できるよん……?」
そう言って後頭部を優しくなでると、嬉しそうにふふっと頬をゆるませた小宮山が、オレの肩に頬ずりをした。
そんな小宮山の笑顔がまたオレの胸を締め付けた。
「じゃ、英二、小宮山さん、そろそろ教室に行こうか?」
「ほえ?あ、うん、そだね」
不二の気持ちを思うとつい感傷的になっちゃって、気がついたらオレまで黙りこくっちゃって、今度は不二に促される形で我に返る。
はい、小宮山もそう返事をして、オレたちの少し後ろを歩き出す。
「そういえば今年は宿題泣きついてこなかったね、優秀な家庭教師のおかげかな?」
「あー、うん、大石よりずっと厳しい先生だったけどね」
絶対写させてくんねーの、そう苦笑いすると、さすがだね、そう不二が小宮山に笑顔を向けていた。