第11章 【サゲスミ】
「かーちゃん、オレ、これから大石んとこに行ってくんね」
自宅を出る際にそうかーちゃんに声をかける。
時刻は夜の9時を回ったところ、今から?いつも大石くんに悪いでしょ!とかーちゃんが難色を示す。
「大丈夫だって、大石の塾が終わってからだから、これからしか会えないの!」
「そうは言っても程々にしなさいよ?」
「ほーい、あ、寝てていいかんね?」
「あたり前でしょ、あんたみたいな鉄砲玉に付き合っていたら、何時になるか分かんないじゃない!」
そんな会話をしながら、ペロッと舌を出し玄関を後にする。
やっぱ女とヤりにいく、なんて言えないじゃん?
自宅を出てすぐに帰宅したねーちゃんに会って、何?これから出かけるの?って言われたから、ねーちゃんこそ女子大生の癖に帰るの早いよん?遊んでくれる男いねーの?って言ったら頭を叩かれる。
どこにでもある母子、姉弟の幸せそうな会話に、目を閉じてそっと微笑む。
「だいたい英二だって彼女いないでしょ!」
「いーの、オレは。今はいんないの」
代わりの女なら沢山いるからね、そう心の中で補足する。
つーかオレ、1人の女で満足出来ないし、彼女とか結婚なんて一生ムリかもね。
自宅からだいぶ離れた距離の繁華街にある、どこにでもある普通のカラオケ屋
その受付にやっほーと顔をだすと、おーっ!と歓迎されてカウンターの奥の部屋に通される。
「あ~、英二、久しぶりー♪」
「つーか、お前生きてたのかよ!」
そう数人の派手な格好をした仲間達が声をかける。
そこは表の一般の客が行くところとはまるで別の空間。
ホール中にタバコの煙とアルコールの臭いが充満する薄暗いところ。
「はは、生きてんに決まってんじゃん!」
そう言って、壁際の席に腰を下ろすと、女共が群がってくる。