第55章 【オンナジ】チュウガクキ②
心にぽっかり穴があいた。
それってこういうことなんだな……そう身を持って理解した。
毎日ぼんやりと空を眺めながら過ごした。
頭の中でずっとテニスボールを打つ音がこだまして、無性にイライラしてどうしようもなかった。
「よーし、英二!今日は思いっきり楽しもう!とことんつき合うよ!」
「えー……、オレ、今、そんな気分じゃない」
「何言っているんだ!英二らしくもない!」
学校も休みの週末の土曜日。
爽やか全開、若干押し売りの大石に無理やり連れて行かれた複合アミューズメント施設。
やぁ、英二、待ってたよ、そうみんなが入り口でオレたちを出迎える。
大石の提案でボウリングをして、不二の誘いでビリヤードをプレイして、英二、次はなにする?なんて聞かれて、んー……卓球かな?なんて返事した時のこと。
「ねぇ、ねぇ、キミたち、時間ある?私たちと一緒にカラオケどうかな?」
そう派手な格好の女子グループがオレたちを逆ナンしてきた。
自慢じゃないけど、オレたちにとって逆ナンなんて珍しいことでもない。
結構だ、そう顔色変えず言い放つ手塚に女の子たちがたじろいで、ごめんね?、僕たち、これから用事があるんだ、なんて不二が人当たりの良い笑顔でフォローする。
「……オレ、行く」
みんなが驚いて振り返った。
逆ナンに着いていこうと思ったのは初めてだった。
別に遊びたいわけじゃなかった。
ただ、ずっと消えない胸のイライラにイライラして、ムシャクシャする気持ちをぶつけたかったのかもしれない。
みんなはオレに良くしてくれたけど、すげー気を遣ってくれたけど、だからこそみんなと一緒にいるのがきつくて……
なんも知らない、他の誰かと羽目を外すことで、このイライラを忘れたかったんだと思う。
「おい、英二、なに言ってるんだ!見ず知らずの女の子達となんて……」
「別にいーじゃん?硬いこと言うなって!」
一番後ろからすっと前にでて、やったー、なんて喜ぶ女の子たちの方に歩み寄る。
止める大石の手を軽くあしらうと、みんなにヒラヒラと後ろ手を振った。