第47章 【オレノコト】
「英二くん……どこに……行くんですか……?」
どこ?……それって、誰?の間違いじゃん……?、そうチラッと視線を向けていうと、小宮山は青い顔をして、ごめんなさい!、そう慌ててオレのシャツに手を伸ばす。
その小宮山のすがるように伸ばされた手を、冷たく振り払う。
だめだ、冷たい態度も言葉も、もう止まんない……
「オレが誰んとこ行こうと、小宮山にはカンケーないじゃん……?」
このまま、小宮山のそばにいても、傷つけるだけだから、今は、一緒にいない方がいい……
「英二くんっ!待って下さい……!」
そう小宮山が必死にオレを呼び止める声に構わずに、バタンとドアを強めに閉めて、そのまま玄関へと進んで靴を履く。
「ごめんなさいっ、私、ちゃんと言いますから!」
そう言いながら、小宮山が急いで追いかけて来る足音が聞こえたけれど、そのまま振り返らずに玄関から外に出た。
……結局、こうなんだよ……
例えどんなに大切にしたいって思ったって、小宮山を傷つけたアイツらに心から腹を立てたって、オレの腕の中で幸せそうな顔をする小宮山をずっと抱きしめていたいと思ったって……
あの女の呪縛からは逃れられなくて、結局は小宮山のちょっとした行動に腹を立てて、酷い言葉を浴びせて傷つけるんだ……
曲がり角を曲がってふーっとため息をつく。
空を仰いで痛む胸をギュッとおさえる。
「英二くん……!」
小宮山がオレを呼ぶ声が聞こえて、そっと電信柱のかげに身を潜めながら、小宮山の家の方を確認する。
英二くんっ!どこですか?、そう近所の目も気にせずに、泣き叫びながら必死に辺りを見回してオレを探す小宮山の姿に、また息苦しさを感じる。
「お願い……行かないで……」
かすかに聞こえたその小宮山の震える声に、慌てて耳をふさいでその場から逃げ出した。