第45章 【カミドメ】
「小宮山、もうカーテン開けて大丈夫ー?」
服に着替え終わる頃、先に着替えを済ませていた英二くんがそう声をかけるから、はい、もう大丈夫です、なんてシーツを整えながら返事をする。
そう言えば勉強の途中だったんだよね……
英二くんがカーテンを開けて部屋が明るくなると、また邪魔になるだろうからと、テーブルの上から髪留めを手にとり、ドレッサーの前でもう一度くるんと纏めてアップにする。
また新たに付けられたしるしが首もとにはっきりと見えて、やっぱりいやらしいかな……?なんてこっそり手で撫でた。
「小宮山ー、オレ、炭酸飲みたい、自販機行って買ってくんね」
そう声をかけた英二くんが私の横を通り過ぎる際に、留めたばかりの髪留めをまたパチンと外して、それからドレッサーの上にトンッと戻す。
英二くん……?
「あ、小宮山もなんか飲むー?」
ついでに買ってくるよん?、そう何事もなかったようにいつもの笑顔で聞いてくれる英二くんに、私も一緒に行っていいですか……?、そう問いかけると、もち!って手を差し出してくれた。
英二くん、もしかして私が髪を纏めるの、嫌なのかな……?
サラサラの髪、好きだって言ってくれるし……
それかやっぱり、首のしるしが目立つからかな……?、そんな風にも思いながら、その手を取って眩しい笑顔を仰ぎ見る。
どったのー?、なんて問いかける英二くんに、別に何でもありませんよ、そう笑顔を返して、自販機までの道を並んで歩いた。