第44章 【ヨフケノケツイ】
「小宮山なら、いいよ」
そう言った時、戸惑いながら小宮山は控えめにオレの胸に吸い付いて、そこにうっすらとしるしを付けた。
「小宮山だけだから……」
「……え?」
「しるし、小宮山だけだから……」
「あ、あの……?」
ますます戸惑う小宮山に、はっきりした答えを言ってやれないまま、そっとその白い首筋にオレのしるしを付ける。
答えを言えない癖に部屋の電気を暗くして、そのままその身体をマットへと沈める。
戸惑いながらも小宮山はオレに身を任せて、それからお互いの身体を求め合った。
「小宮山……から……」
「……え……?」
「小宮山、だけ、だから……」
オレがしるしをつけるのも、オレにつけていいのも、小宮山だけだから……
だけど本人にははっきり言えなくて、言葉を濁して何度も呟いた。
行為の果てにそのまま意識を手放し、オレの腕の中で眠る小宮山の髪をそっと撫でる。
芽衣子ちゃんとの行為に感づいて、すげー辛い癖に平気だからと無理に笑顔を作ろうとするその涙に、なんであん時、芽衣子ちゃんとの行為を我慢できなかったんだよ、そう自分に腹が立って唇を噛んだ。
ズキンと痛む胸に小宮山を抱きしめると、んっ……っと苦しそうに眉間にしわを寄せたから、あ、ごめん、そう慌ててその力を緩める。
……はぁ、オレ、ずっと後悔してばっかだな……
そっと手を伸ばして机の上に置いた携帯を取り出すと、時刻を確認してそれからちょっと考え込む。
この時間ならまだ起きてるよな……、小宮山を起こさないように静かにその頭を持ち上げると、腕を引き抜いて眠ったままのその頬にキスをする。
それからベッドを抜け出して、下着だけ身につけると、小宮山が最初に座った窓辺へと移動する。
携帯を操作して思い描いた人物の名前を探し出すと、ふーっと大きく深呼吸をしてからLINEの無料通話の発信をタップして、一回、二回……そう呼び出し音を数えながら相手が電話に出るのを待った。