第42章 【イエジ】
「どうして、私に抱っこさせてくれるんですか……?」
そう、眉を下げて少し困った顔をしながら問いかける小宮山に、ちょっと戸惑って、だって、男のオレが抱っこするより、小宮山の方が似合うじゃん?なんて言ってニイッと笑う。
小宮山が聞きたいのはこんな答えじゃないのはわかってんだけどさ……
でも、なんで小宮山には貸してあげれるのか、自分でもよくわかってなくて、答えられないその答えを笑顔で誤魔化し後頭部で腕を組む。
そんなオレに、英二くんの方がずっと似合いますよ……?、そう小宮山はますます困った笑顔を見せた。
「なんだかんだ言って、結局、小宮山んち、アレ以来だよにゃ~♪」
公園を抜けて程なくすると、小宮山の家が見えてくる。
途中、大きな熊のぬいぐるみを抱えて歩く小宮山は、公園で遊んでいる子ども達や行き交う人々に散々注目されていた。
流石にコンビニに寄りたいとオレが言うと、私はここで待ってます、そう建物の影に身を潜めた。
そう~?そう言って離れてからチラッと振り返ると、壁の脇から覗く大きな熊のぬいぐるみが余計に目立って、可笑しくて声を出して笑った。
コンビニでお菓子や雑誌を買って戻ると、小宮山は子供たちに囲まれていて、ごめんね?コレはお姉ちゃんのお友達の大切なものだから触らせてあげれないの、そう困った声をあげて大五郎を高く上げていた。
その焦る様子が可笑しくてまた笑うと、英二くん、笑ってないで助けてください、そう少しだけ頬を膨らませた。
そんな珍しいものを見る多くの視線や子供たちの相手に疲れたのか、やっと着きましたね……そう引きつった笑顔を見せながら、小宮山は玄関の鍵を開ける。
「お邪魔しまーす♪」
どうぞ、そう誘導してもらい先に中に入って玄関先に荷物を置くと、ほいっと小宮山から大五郎を受け取って、ちょいっと荷物の横に座らせる。
それから、後から入ってきた小宮山が玄関の鍵を掛けたのを確認すると、その細い身体をギュッと後ろから抱きしめた。