第42章 【イエジ】
「小宮山……!」
ナオちゃん達の恐怖に震えながら、必死に英二くんに助けを求めて、それからそんな懲りない自分を嘲笑ったその瞬間、衝撃音と時間差で私を包み込んだのは、苦しくて切なくて、それでも恋い焦がれた彼のものだった。
え……?って思って、どうして……?って目を見開いて、それから、ああ、これは夢だ……って自分に言い聞かせた。
こんな所にナオちゃんだけじゃなく、英二くんまでいるはずないし、そもそも英二くんが私を助けてくれるはずないもの……
だけど、その温もりは確かに英二くんのもので、本当に英二くんだ……って、夢じゃないんだ……って、胸がいっぱいになった。
ナオちゃん達が怖くて、ふるえが止まらなくて、そしたら英二くんが背中に隠してくれて……
嬉しくて、でも怖くて、思わずそのシャツの裾を握りしめたら、英二くんがこちらを振り返った。
怒られる……!
その視線と目があったその瞬間、今度は英二くんに対しての恐怖で身体が縮こまり、慌てて謝ってその手を離すと、私の手を取りその身体に回させて、それからギュッと握りしめてくれた。
そんなに怯えんなって、そう囁いてくれたその懐かしい声に、ああ、いいんだ……、今は寄り添っても怒られないんだ……そう思ったら嬉しくて、我慢できずにもう一方の手も腰に回して、その背中に頬を寄せた。
英二くんの背中は、凄く暖かくて、そして決して男の子の中では広い方ではないのに、とても大きくて頼もしく思えた。
私のためにナオちゃん達に怒りを露わにしてくれるその様子に、凄く嬉しいんだけど、でもやっぱりナオちゃんの事が怖くて、その言葉の一つ一つが私を恐怖で震え上がらせた。
そんな私の様子をみた英二くんは、眉間にしわを寄せるんだけど、それは今までのように私に対する嫌悪感からのものじゃなくて、私のためにそんな風に英二くんが怒ってくれるなんて凄く嬉しかった。