第39章 【セフレトモトカレ】
「あー、もういいよ、オレがやるからっ!」
気がついたら大石のラケットを奪い取って、不二から受け取ったボールを高くトスしていた。
黄色いボールをスイートスポットがとらえた感覚。
その瞬間、思い切り振り下ろす。
すぐさま前に走り出す。
それはまるでサーブと同時にネットダッシュする時と同じ。
サーブ&ボレーヤーのオレが数え切れないほど繰り返したその動きは、テニスをやめて一年半が過ぎていても、しっかり身体に染みついていた。
「英二!!」
そう後ろから叫ぶ大石の声。
みんなの騒然とするざわめき音。
振り返らず前だけを見て走る。
恐怖に震えるその小さい身体に飛びついて引き寄せた。
「小宮山!!」
腕の中に包み込んだ懐かしい感触。
鼻に広がる心地よいフローラルの香り。
ああ、小宮山だ____