第36章 【セイフクデート】
「いいんだよ、本当に小宮山さんとは良い友人で」
そうにこやかにオレを見下ろしながら笑うその不二の笑顔は、晴れ晴れとしていて、確かに心からそう思ってるって感じなんだけど、オレの気持ちはやっぱりスッキリしなくて……
「んじゃ、オレがまた小宮山とヤってもいいのかよ……?」
「構わないよ、前にも言ったけど、僕は英二と小宮山さんがうまくいけばいいと思っているからね」
本当かよー?そんな風に割り切れるもんー?
桃みたいなのはわかりやすいけど、小宮山のオレに対する気持ちも分からないでもないけど、不二のような気持ちは、全然、理解できねー……
やっぱ、オレ、人を好きになる気持ちなんて、一生、理解できそうにないや。
そう後頭部で腕を組んで、それからヤレヤレと苦笑いで首を横に振った。
「……LINE、さっきからずっと鳴ってるよ?」
「あー……わかってる」
通知窓で確認したメッセージは、オレと芽衣子ちゃんのことを知りたがる野次馬のやつらと、それから桃からの抗議文。
なんて返信していいか分からず、開くことすらまだしていない。
「不二にだってだいたい同じの、届いてんじゃん?」
同じグループなんだからさ、そう言って携帯をヒラヒラさせると、そう言えば、そうだね……そう言って不二も携帯を操作し始める。
次の瞬間、オレの携帯にLINEが届いたから、へ?って思ってメッセージを開くと、やっぱりそれは不二からで、立て続けに何通もベルが鳴る。
「『スイセン』『ドクゼリ』『トリカブト』……何これ?」
「クスッ、毒草」
そう言ってクスクスと黒い笑みを浮かべる不二に、ふ、ふーん……そう苦笑いして目をそらす。
やっぱ、小宮山のことで怒ってんじゃん……?、そう首をすくめながらオートテニス場へと向かう不二の背中を見送った。