第36章 【セイフクデート】
「いよいよ、この日が来ちゃったな……」
目を覚ますと憂鬱な気分で空を見上げる。
ため息をついて携帯に目を向けて、また深く息を吐く。
英二くんから連絡がなくなって、もうだいぶ日数は経っていた。
黙って待ってろって言われたけど、結局一学期が終わる今日まで一切連絡がこなかった。
連絡をくれていた頃だって、土日や学校が休みの日に呼び出されたことなんかないから、夏休みに入ってから英二くんから連絡がくるとは思えなくて、でもかすかな希望も捨てたくなくて、もう自分でも何がしたいのかわからない。
「……なんだろう……?」
憂鬱な気持ちでいつものようにに登校した廊下で、突如出来ている人だかりに首を傾げる。
ここって……不二くんのクラス?
何気なく通りすぎるさいにヒョイッと中をのぞき見ると、その人だかりは不二くんの席に集まっていた。
「不二くん、インターハイ頑張ってね!」
「コレ、リストバンド、よかったら使って?」
そう口々にする女の子達に、……あ、と口を開けて立ち止まる。
そうだ……英二くんのことで頭がいっぱいだったから気が回らなかったけど、不二くん、夏休み中にインターハイに出場するんだ……
そう校舎の屋上から盛大に出場を祝う垂れ幕を思い出す。
テニス部は残念ながら団体戦は逃したけれど、不二くんが個人戦で出場を決めていて、しかもシードにもなっている優勝候補の一角だとか。
今日、学校最終日だから、それでか……
その女の子達が渡しているプレゼントに、愛だなぁ……なんて思って、それから、私との噂で泣いている子もいるかも知れないな……そう考えると申し訳ない気持ちになる。
インターハイかぁ……そう教室の自分の席に座って先ほどの光景を思い出す。
不二くんが笑顔で受け取っていたプレゼント、沢山お世話になっているから私も何かあげたいけれど、生憎なにもないし……
本当、私って気が利かないなぁ……
自分の席に座ると、そんな自分にため息をついた。