第34章 【タイイクサイニテ】
「……小宮山さんって、なんであんなに人を拒むのかなぁ……?」
んー……と腕を組んで首を傾げる市川に、んなこと知るかよ……なんて内心ため息をついて、それからいくつか思い浮かぶ心当たりに気がつかない振をする。
今日も誘ったんだけど、思い切り断られちゃったよ、そう苦笑いする市川に、小宮山がくるはずないじゃん、そう思ってオレも苦笑いする。
「さぁー……?性格じゃないのー?」
知んないけど、そう適当に答えながら、だいたい、なんでオレに聞くのさ?なんて思って、そんな心の中のイライラを悟られないようにニイッと笑うと、市川はまだ真剣な顔で考え込んでいた。
「そうなのかなぁ……?私、気になるんだよね……本当はもっと普通の女の子なんじゃないかなって……」
そう目を伏せて呟く市川に、よくわかってんじゃん……なんて思う。
小宮山の笑顔を思い出すと、途端に胸が痛み出す。
本当、小宮山、オレの前じゃ普通の女の子だよ……
でも普段はそんなこと全然表に出さずに学校生活を送ってる。
そんで今はオレの攻撃に必死に耐えて、オレに関わらないように気を使って、そんで泣いてばっかいて……
あー、もう!なんなんだよ!そう胸の痛みを急いで振り払うと、ふーっとゆっくり息を吐いて深呼吸する。
ダメだ、これ以上小宮山の話してると顔に出る。
「んなこと、オレに言われてもわかんないよん!」
それこそ不二にでも聞いたら?そう言って市川に背を向けると、何よ、一緒の委員になってから親しそうにしてたくせに!なんて不満げな声が聞こえてくる。
「前だって小宮山さんのこと庇ってたじゃない……!」
庇った……?
ああ、この前小宮山が市川のタオルを断ったとき、言葉足らずなんだって言ってやったっけ……そんな風に思いながら軽くため息をつく。
あん時は小宮山のこと、大切にするって思ってたんだよな……
胸に出来たささくれが地味に痛んで、なんか息苦しかった。