第33章 【オイテケボリ】
「好きに言わせておけばいいよ、みんなすぐに飽きるから」
そう言ってくれた不二くんに感謝ながら会議室に行くと、自分のクラスの席に座っていつものように本を読む。
まだ空席の隣の席にチラッと視線を向けて、軽いため息をつくと鈍い痛みを発する胸をそっと押さえる。
英二くん、ちゃんと来てくれるかな……?
前回はここで手、繋いでくれたっけな、なんて思ってその時の温もりを思い出す。
ふと隣の席のイスが勢いよく引かれて思わず視線を向けてしまう。
すると英二くんと目があって、そんな彼はまた眉間にしわを寄せた。
腰を下ろした際の、ギシッとパイプ椅子が軋む音に思わず肩がビクッと跳ねる。
英二くんはそんな私に構わずに、私の方の手で頬杖をついて、それから思い切り背中を向けた。
通路の向こうのクラス委員と楽しそうに話をする英二くんの声を聞きながら、滲む涙を髪の毛でそっと隠す。
大丈夫……大丈夫……そう心の中で必死に唱えると、すーっと大きく息を吸い、それから平気な振りして本に視線を落とした。
明日の最終打ち合わせが終わると、その後はグラウンドに移動して会場の準備。
倉庫から道具関係を出して指定の位置に移動させ、万国旗で華やかに飾り付けをすると、いよいよだねってみんなの気分も盛り上がる。
「はい、準備はこれで終わりです。いよいよ明日は本番ですね、よろしくお願いします」
そう委員長の締めの挨拶で準備も終わると、みんなそれぞれ教室に戻る。
結局、会議室の後は目があうこともなく、英二くんとは何もないまま帰宅の途に付いた。