第30章 【ソレゾレノヨル】
『それから生徒会執行部のことなんだけど……』
そう不二くんが言いにくそうに話すから、不思議に思ってどうしたんですか?そう問いかける。
せっかく一緒にやってくれることになったのに、残念だけどこの話は……そう言う不二くんに、私、やりますよ……?そう返事をする。
『え……?でも……』
「いいんです、一度決めたことはちゃんとやらないと気持ち悪いですから」
そう言う私に、それじゃ改めてよろしく、そう不二くんは電話の向こうでクスッと笑った。
通話を終えると、すぐにメールの着信音がなって、不二くんから転送してもらった添付写真を確認する。
「……これは、本当に明日から凄いことになりそうだな……」
確認しておきたいので、その写真、転送してください、そう電話を切る前にお願いしたとき、え?でも……そう不二くんがためらっていた理由が一目瞭然で、思わず苦笑いをしてしまう。
その写真だけ見たら、幸せそうな恋人同士にしか見えないその様子に、この写真、当然英二くんも見たんだろうな……なんて思って、でも絶対何とも思ってないだろうな……なんて余計なことまで考えて少し落ち込んだ。
みゃあ、そうネコ丸が足にすり寄ってくる。
どうしたの?そう言って抱き上げると、ゴロゴロと喉を鳴らして頬をすり寄せてくる。
お前は素直に甘えられていいね、そう言ってそっと目を伏せる。
今日は私、不二くんに沢山甘えてしまったけれど、本当は英二くんにいっぱい甘えたいよ……
そう呟くとまた涙が零れ落ちて、そんな私を首を傾げて不思議そうに見たネコ丸が、頬の涙をペロッと舐めてくれる。
そうだよね、泣いちゃまた英二くんに怒られるよね……そう自分に言い聞かせ、指で涙を拭う。
ネコ丸、ありがとう……そう呟いて、それからもう一度夜空を眺める。
本当に苦しんでいるのは英二くんだもの……そう空を眺める彼の寂しげな目を思い出して胸を痛める。
静かな部屋の中には、パソコンから再生される英二くんの、テニスを楽しむ明るい声だけが流れていた。