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【テニプリ】闇菊【R18】

第28章 【ヒキガネ】




「あ、あの、私、そろそろ失礼いたします」


英二くんのお母さんとお姉さんに、英二くんが貸してくれた大きな熊のぬいぐるみのことを聞かれて戸惑っていると、英二くんが迷惑そうな顔でドアを顎で指すから、帰れってことなんだなってすぐに思って立ち上がる。


引き止める英二くんのお母さんに笑顔で対応すと、それじゃ、僕も一緒に、そう言って不二くんも立ちあがる。


「2人とも帰っちゃうのー?」


そう残念そうな振りをする英二くんにぬいぐるみを返すと、その見せかけの笑顔にまた泣きそうになり慌てて笑顔を作った。


菊丸くん、あの……そうカバンを開けてレポート用紙を入れたクリアファイルを取り出すと、そっと彼の前に置く。


「これ、午後の授業のノートです。期末対策も書いておきましたから、良かったら使って下さい」


するとそのファイルを覗き見た英二くんのお姉さんが、何このノート!凄いわかりやすいんだけど!なんて声を上げて、さすが小宮山さん、学年首席♪なんて英二くんがおどけて笑う。


学年首席なの!?なんて驚くお姉さんに、なんて言ったらいいかわからず笑顔で誤魔化すと、全く、英二の友達はみんな優秀なのに、なんでこの子はこうなのかしらねー、なんて英二くんのお母さんがため息をつく。


小宮山さん、英二なんてノート一切とってないから、そこまでしてやる必要ないのに、そう言って不二くんがクスクス笑い、なんだとー、そう英二くんが頬を膨らませる。


お姉さんが入ってくるまでのあの刺々しい雰囲気なんて今は全然感じられなくて、でも心の中はもうどうしたらよいかわからないほど土砂降りで、私、ちゃんと笑えてるのかな?そう自分の笑顔に自信がもてないまま笑い続ける。


また来て下さいね、なんて玄関で見送ってくれるお家の方に、はいと笑顔で答えて頭を下げたけど、もう二度と来ることはないよね……そう内心ため息をつく。


「2人とも本当にあんがとねー」


玄関先の階段に座る英二くんの笑顔が、すぐに辛そうなものに変わりそのまま俯いたから、胸がズキンと痛んで苦しかった。

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