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【テニプリ】闇菊【R18】

第28章 【ヒキガネ】




「……じ!……英二!」


保健室で少し眠ると、聞き慣れた声で目を覚ます。
かーちゃん……?そうそっと顔にかけたタオルをよけて目を開けると、心配そうな顔で覗き込むかーちゃんが見えた。


大丈夫……?そう涙目で覗き込むかーちゃんに、かーちゃん大袈裟、仕事早退してまでわざわざ迎えに来なくていいのに、そう言って笑顔を見せると、バカ!そうかーちゃんは声を荒げ、それからオレの身体を抱きしめる。


そんなかーちゃんの腕の中はすげーあったかくて、ごめん、心配かけて……そう目を伏せて謝ると、息子なんだから当たり前でしょ、そうオレを抱きしめる腕に力を込めるから、みんなの前ですげーカッコ悪いのに、堪えきれずに涙が溢れた。


「本当、お世話になりました。みんなもありがとうね」


みんなに支えられて車に乗ると、そうかーちゃんが先生方や不二達にお礼を言う。
先生がオレのカバンを手渡しながら、みんなにはお前の言う通り腹こわしたことにしておいたからな、なんて言って笑うと、ゆっくり休めよ、そうオレの頭をワシャワシャとかき乱すようになでる。


オレ、そんなガキじゃないよん、そう言って苦笑いすると、先生から見たら高校生なんてまだまだガキだ、そう先生が笑うから、早く大人になんないかな……そう小さい声で呟いた。


「英二、何か伝えること、ある?」


そう言う不二に、小宮山のことを言っているんだなってすぐに思って、別にない、そう言って目を伏せる。


大丈夫とか、ありがとうとか、そんな言葉を伝えてもらえば不二は満足なのかもしんないけれど、胸の奥底から沸き起こる嫌な感情がその言葉を飲み込ませる。


いいの?そう眉をひそめる不二に、いーんだって、そう笑顔を作って答えると、そんなオレたちのやりとりを少し戸惑った顔で見ているタカさんと、全部わかっているような顔の乾に、ほんと、あんがとね、そう言って笑顔をむけた。

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