第27章 【シンパイ】
「じゃ、そろそろ行こうか」
英二くんの無事も確認できてホッとしている私に、不二くんはそう言って立ちあがる。
「え……行くってどこへですか?」
そう思わず聞いた私に、どこだと思う?なんて笑顔で聞き返す不二くんに、そういう会話、得意じゃないんですけど、そうため息をついて考える。
そう言えば学校でも桃城くんや乾くんに私と一緒に行くって言っていたなって思い出して、まさかとは思うけれど、でもこの流れで考えられるところと言ったら一カ所しか思いつかなくて、だったらどうしよう?そう思ったらサーッと血の気が引いていく。
そんな私を見た不二くんは、気がついたようだね、そうクスクス笑い、英二の家はもうすぐだよ、そう言って公園の先を指差した。
「だ、ダメです!!絶対!!」
慌てて私も立ち上がり、めいいっぱい両手を大きく顔の前で振る。
なに言ってるんですか!?そう思わず不二くんをキッと睨みつけてしまう。
英二くんの家に行く?私が?そんなこと、許されるはずないじゃないの!
不二くん、わかってくれているのかと思ったのに、私の立場、全然わかってない!!
ハァーっとため息をついて不二くんを見上げると、私はこれで失礼します、そう言って頭を下げて背をむける。
「どうして?早退した英二の様子、気にならない?」
不二くんのその言葉にピクッと身体が反応してしまい、そんな私の動きを見透かしたのか、英二、だいぶ落ち着いたとはいえ、支えられながら車で帰ったよ?なんてまた心配になるようなことを言う。
不二くんズルい、気にならないはずないじゃない……
でも私が行ったら絶対英二くん怒るに決まってる、ましてやあんな拒否されたばかりなのに……
早く行けって!!そう強い口調で言った英二くんを思い出し、またズキンと痛む胸をギュッとおさえる。
そんな私に、大丈夫だよ、英二には僕がなにも言わせないからね、そう言って不二くんは優しく笑った。