第27章 【シンパイ】
ざわめきと突き刺さるような視線の中、逃げるように不二くんの教室を後にした私は、トイレで顔を洗い自分の教室へとむかう。
英二くんの事が心配で、授業なんてとても出席できる状態ではなかったけれど、不二くんに任せておけば英二くんのことは大丈夫。
後は私に出来ることをするだけ、そう思って教室に入ると、机の中からレポート用紙を取り出す。
授業が始まると自分のノートの他に、英二くんの分もそのレポート用紙にまとめて書く。
少しでも彼の役に立ちたくて、期末にむけての要点なども書き足しておく。
余計なことと怒られるかもしれないけれど、もしかしたら渡す機会もないまま終わるかもしれないけれど、今は彼のために何かをしていないと、冷静な精神状態を保っていられなくて、私は二人分のノートを書きとめた。
コンコンッ
授業が始まりほどなくして、教室のドアがノックされ、担任の先生が顔を覗かせる。
教科担任の先生と廊下に出て、二言、三言、言葉を交わしてから、先生は英二くんの席に行って彼の荷物をまとめだす。
「先生、英二、どうしたんですかー?」
そう教室中がざわめく中、なんでもない、腹こわして早退するそうだ、そう先生は気にするな、とあっけらかんと言う。
アイツ、昼、なに食ったんだよー!?そう大笑いするクラスメイト達に、私のお弁当です、そう心の中で返事する。
それにしても、おなかこわして……?
そんなの絶対、嘘、アレはそんな雰囲気じゃなかった……
おなか痛い、それは以前、英二くんが使った私の遅刻の言い訳とすっかり同じで、きっと英二くんの事だから本当のことなんか言わなくて、不二くんもその辺はちゃんと心得ていて、先生方は何か事情を知っているのかな……?
とにかく英二くんが大丈夫なのか凄く気になって、不二くんに聞いたらわかるかな?って思って、でも私が触れてはいけない話題な気もして、どうしたらいいかわからずにため息をついた。