第25章 【ランチタイム】
「英二、今日弁当は?」
昼休みになると周りの友達がそう声をかけるから、オレ、今日は学食ー、そう言って財布をヒラヒラさせて教室から出る。
それから、あっ!って思って財布の中を確認すると、あっちゃーって頭を抱えて廊下にしゃがみこむ。
ダメじゃん、オレ、今日、金もってきてねーっ!!
コンビニ受け取りでネット注文してたゴムを昨日の放課後に引き取りに行って、ついでにお菓子や雑誌を買ったりして、手持ちの金を全部使い切った事を思い出す。
速攻ゴムだけ補充して、小遣い入れ忘れるって本当オレのバカ!!そう頭をワシャワシャ掻き乱すと、はあーっと大きくため息をついた。
「英二、こんな所で何やってんの?」
面白いけど、通行の邪魔になってるよ?そう声をかけられて、はっ、この人の不幸を喜ぶ悪趣味な声は!って慌てて顔を上げると、案の定、そこには笑顔の不二が立っていた。
ふじぃー、学食代貸してーって、急いで不二の顔を覗き込んで頼み込むと、もちろんお断りだよ、そう即答で断られる。
えー、いーじゃん!明日、絶対返すからさーって頬を膨らませるオレに、英二を甘やかすと調子に乗るからね、そう不二は目を開けて不適に笑うから、そ、そだね、そう言って首をすくめた。
「そのかわり、僕の弁当をあげるよ」
「マジ?んじゃ半分わけてー!」
「半分と言わず全部あげるよ、はい」
そう言って弁当を差し出す不二の笑顔に、言い知れぬ恐ろしいオーラを感じ、やっぱいいや、そう引きつった笑顔でそれを断ると、ダッシュでその場を離れる。
あの笑顔の不二から食べ物をもらうなんて自殺行為だっての!そう先週の不二汁を飲んで息絶えていた桃を思い出して身震いをする。
そんで、あっ、桃がいんじゃん!って思い出して、あいつ、毎日何個も弁当持って来てんだから、頼んだら一個くらいわけてくれそーじゃん?オレってばあったまいー!そう自画自賛しながら鼻歌まじりで桃の教室へとむかった。